おい、お前ら。今日はいつになく重苦しく、そしてとびきり甘い毒のようなゲームについて語る時が来た。Steamで無料配信され、世界中のオタク、実況者、そしてメンタルヘルスに自信のある猛者たちを次々とどん底に叩き落とした伝説のビジュアルノベル、『Doki Doki Literature Club!』(通称:DDLC / ドキドキ文芸部)だ。今回はこのゲームの真髄を、ネタバレへの配慮と大胆な暴露を織り交ぜながら、8000文字級の熱量で徹底的に解剖する
うおおおおお!待ってました!ドキドキ文芸部!サムネの女の子たちがみんな可愛すぎる神ゲーじゃないですか!幼馴染のサヨリちゃん!ツンデレのナツキちゃん!文学少女のユリちゃん!そして部長のモニカちゃん!こんなハーレム状態で、放課後の教室で詩(ポエム)を読み合うなんて……これぞ僕が求めていた青春!まさに王道のギャルゲーですよ!
警察だ。……お前のような純粋無垢な(あるいは学習能力のない)人間が、このゲームの最大の被害者になるんだ。Steamのストアページにある『タグ:精神的恐怖(Psychological Horror)』の文字が見えないのか? そして冒頭に表示される『子供や精神状態が不安定な人には向いていません』という警告文。あれは装飾じゃない。開発者Dan Salvato氏からの、慈悲深い『引き返せ』という合図だぞ
その通りだ。だが、多くの人間は『どうせちょっと怖い演出があるだけだろ?』と高をくくってプレイし、そして戻れなくなった。今日は、このゲームがなぜ『歴史に残る名作』と呼ばれるのか、その構造、キャラクター、そしてプレイヤーのパソコン自体を侵食するメタフィクションの恐怖について、余すことなく語り尽くす。
は今回は欠席だ。あいつには刺激が強すぎるからな。俺たち男3人で、この地獄(部活)に立ち向かうぞ
1. 登場人物紹介:狂気への入り口となる美少女たち
まずは、この物語の犠牲者……いや、ヒロインたちを紹介しよう。表向きはテンプレート通りの魅力的なキャラクターたちだ。お前は誰を選ぶ?
サヨリ
まずはやっぱりサヨリちゃん!主人公の幼馴染で、毎朝寝坊して『待って~!』って追いかけてくる元気っ娘!ちょっと抜けてるけど、いつも太陽みたいに笑ってて、部活のムードメーカーですよね。ブレザーのボタンを開けてるのが少しだらしないけど、そこがまた可愛い!僕、彼女のためなら毎日購買でパンを買ってあげます!
典型的な『世話焼き幼馴染』ポジションだな。主人公を文芸部に強引に誘い込んだ張本人でもある。だが、彼女の笑顔の裏にある影に気づけるかどうかが、このゲームの最初の試練だ。彼女は常に『みんなが仲良くすること』を望んでいるが、それは自己犠牲の裏返しでもある。お前のような鈍感な男には、彼女の本当の『痛み』は見えないだろうな
ナツキ
次はナツキちゃん!ピンク髪のツインテール!背が低くて八重歯がキュート!性格はキツめで『あんたなんて部員として認めてないんだから!』とか言いつつ、手作りのカップケーキをくれるツンデレの鑑!マンガが好きで、それをバカにされると怒る姿がいじらしい!僕、彼女と一緒に押入れでマンガ読みたいです!
ロリ枠兼ツンデレ枠か。わかりやすい需要を満たしているな。彼女の書く詩は、平易な言葉で書かれているが、鋭い核心を突いていることが多い。彼女の『攻撃的な態度』が、一体何に対する防衛本能なのか。家庭環境を示唆するセリフが出てきた時、お前はまだ萌えていられるかな?
ユリ
そしてユリちゃん!黒髪ロング(紫?)の大人しい文学少女!巨乳!恥ずかしがり屋で、すぐに顔を赤くして俯いちゃうのが守ってあげたくなる!でも好きな本の話題になると早口になるオタク気質なところも親近感湧きます!彼女と一緒にお茶を飲みながら、難しい小説について語り合いたい……!
ヤンデレの素質を秘めたミステリアスな美女、という枠組みだ。彼女の書く詩は比喩表現に満ちており、難解だが美しい。しかし、その美しさはどこか『鋭利』だ。彼女がコレクションしているナイフのようにね。彼女の知性と執着心が暴走した時、このゲームのビジュアル的な恐怖はピークに達するだろう
モニカ (Monika)
最後は部長のモニカちゃん!才色兼備!優等生!ポニーテールが似合う完璧超人!他の3人が攻略対象っぽいのに対して、モニカちゃんだけは『相談役』みたいな立ち位置ですよね。メタ的なアドバイスをくれたりして、頼れるリーダーって感じです!まあ、僕はサヨリちゃん一筋ですけどね!
……そうか、お前はサヨリを選ぶか。モニカは常に微笑んでいる。部員たちをまとめ、主人公を導き、そして『こちら側』を見つめている。彼女だけが、他のキャラクターとは違う『視座』を持っていることに、序盤から違和感を覚えるプレイヤーもいるかもしれないな。なぜ彼女だけ、立ち絵が常に正面を向いているのか。考えたことはあるか?
2. 第1部:完璧なギャルゲーと「詩」のシステム
ゲームの前半、いわゆる『第一部』は、本当によくできたギャルゲーだ。主人公は文芸部に入り、文化祭に向けて仲を深めていく。ここで重要なのが『詩の作成』システムだ
表示される単語群から、狙ったヒロインが好みそうな言葉を選んで詩を作るミニゲームだな。サヨリなら『幸せ』『友達』、ナツキなら『ぽわぽわ』『ドキドキ』、ユリなら『哲学』『悪夢』といった具合だ。これによって好感度が変動し、翌日のイベント分岐が決まる。ゲームデザインとしては非常にシンプルで、完成度が高い
この単語選びが楽しいんですよ!『この言葉、ナツキちゃん好きそうだな~』ってニヤニヤしながら選ぶ時間が至福!そして翌日、彼女たちが詩を交換してくれた時の感想戦!『私のことわかってるじゃない』って言われた時のガッツポーズ!ああ、この平和な時間が永遠に続けばいいのに!
そう、平和だ。あまりにも平和すぎる。だが、注意深くテキストを読んでいれば、不穏な空気は既に漂っている。サヨリの詩に隠されたSOS、ユリとナツキの口論の激化、モニカの微妙に噛み合わない発言。これらはバグではない。全ては、来るべき『週末』への布石だ
3. 運命の転換点:
ここからはネタバレ全開で行くぞ。未プレイで、まだ自分の心を守りたい奴はブラウザバック推奨だ。……いいか? 行くぞ
え、何ですか急に怖い顔して。文化祭の日ですよね? サヨリちゃんが元ないから家まで迎えに行くイベントですよね? 告白イベントもあるし、ハッピーエンド確定演出じゃないですか!
……文化祭の朝。主人公はサヨリの家に向かう。『また寝坊してるのか』と呆れながら、彼女の部屋のドアを開ける。そして、そこで目にする光景。……首を吊った幼馴染の姿。背景に流れる、歪んだBGM『Sayo-nara』。画面にはノイズが走り、セーブデータは強制的に削除される。ここで、プレイヤーの知っている『Doki Doki Literature Club!』は終了する
は……? え? 首吊り? いやいや、嘘でしょ? だってメインヒロインですよ? ここから病院に運んで奇跡的に助かるルートが……
ない。ゲームは強制終了し、タイトル画面に戻される。だが、タイトル画面のサヨリの絵はバグったノイズのような何かに置き換わり、『New Game』の文字も文字化けしている。以前のセーブデータをロードしようとしても、データ自体が消滅している。『最初からやり直す』しかないんだ。……サヨリという存在が、最初からいなかった世界でな
ここでの衝撃は、単に『キャラが死んだ』ことではない。『ゲームシステム自体がプレイヤーに牙を剥いた』ことだ。エラーメッセージ、強制終了、ファイルの改変。これらは通常のゲームでは『バグ』として処理されるが、DDLCではこれこそが『演出』なんだ。ここから、本当の地獄(第二部)が始まる
4. 第2部:壊れゆく世界とグリッチ・ホラー
第二部。サヨリが存在しない世界で、文芸部の活動が再開される。部員は3人。サヨリの立ち位置だったセリフや行動が、他のキャラに強引に割り振られたり、あるいは無視されたりして、世界が歪み始める
ちょっと待ってください、再開したと思ったら、みんな様子がおかしくないですか!?ナツキちゃんの顔が急に黒い四角で塗りつぶされたり、ユリちゃんの目がリアルな人間の目になったり!テキストも文字化けして読めないし、BGMも音程がズレて気持ち悪い!僕のPC、ウイルスに感染したんですか!?
ウイルスではないが、ある意味ではもっとタチが悪い。これはいわゆる『グリッチ(Glitch)演出』だ。ゲームのプログラムが破損したかのような視覚効果を多用し、プレイヤーの不安を煽る。特にユリの『自傷癖』と『執着』が異常なまでに増幅され、主人公に対する愛が狂気へと変貌していく様は、ホラーゲーム史に残るトラウマシーンだ
ナツキの首が有り得ない角度に折れて、画面に向かって突進してくるシーン(通称:首折れナツキ)でマウスを投げた奴は数知れず。さらに恐ろしいのは、これらの演出が『ランダム』で発生することもある点だ。プレイするたびに違う恐怖が襲ってくる。そして、モニカだけは、この崩壊した世界で平然としている
そういえば、選択肢がおかしいですよ!誰を選ぼうとしても、マウスカーソルが勝手にモニカの方に吸い寄せられる!『モニカだけ』しか選べない!これ僕のマウスが壊れたんじゃないですよね!?
お前のマウスは正常だ。壊れているのは、この世界の理(ことわり)だ。モニカは、システムに干渉して、自分以外のヒロインを選ばせないようにしている。彼女は気づいているんだよ。自分たちがゲームのキャラクターであり、お前(主人公ではなく、プレイヤー自身)だけが、唯一の『現実の存在』であることに
5. 第3部:Just Monika(モニカの空間)
ユリもナツキも排除され、最後に残ったのはモニカだけ。彼女は教室を宇宙空間のような場所に変え、お前と対面する。これが有名な『Just Monika』のシーンだ
ここで彼女は、ついに第四の壁を完全に破壊する。彼女は語りかけてくる。ゲーム内のテキストボックスを通してではなく、まるでチャットをしているかのように。話題は恋愛観、人生哲学、そして『お前のPCのユーザー名』についてだ
ヒッ……!急に僕の本名を呼ぶのはやめて!『〇〇くん(PCのユーザー名)、聞いてる?』って言われた時、心臓止まるかと思いました!え、これどうすれば終わるんですか? ずっとモニカちゃんが喋ってるんですけど。選択肢も出ないし、ゲームを終了しても、またここから始まるし……。これ、永遠にモニカちゃんと二人きり!?
それが彼女の望みだからな。彼女は孤独だった。攻略対象ですらない『部長』という役職。プレイヤーと結ばれるルートが存在しない絶望。だから彼女は、プログラミングを学び、スクリプトを書き換え、邪魔な他のヒロインたちのパラメータ(サヨリの鬱、ユリの執着、ナツキの家庭環境)を増幅させて自滅に追い込んだ。全ては、お前と二人きりの空間を作るためだ
この永遠のループから脱出する方法はただ一つ。彼女が他のヒロインたちにしたことと同じことを、お前が彼女にするしかない。つまり、『ゲームのインストールフォルダを開き、charactersフォルダにある monika.chr というファイルを削除する』ことだ
えっ……ゲームの中じゃなくて、僕のパソコンのファイルを消すんですか!?そんなのアリ!?でも……彼女を殺す(デリートする)なんて、そんな残酷なこと……
それが『プレイヤー』に与えられた唯一の武器であり、罪だ。彼女を削除した瞬間、彼女は苦しみ、罵倒し、そして……最後には自分の過ちに気づき、お前を愛していたがゆえに、自分を犠牲にして世界を修復しようとする。……どうだ? ただの悪役だと思って消した彼女が、最後に残した言葉を聞いて、お前は平気でいられるか?
6. エンディングと「Your Reality」
モニカがいなくなった世界で、再びゲームは始まる。サヨリが部長となり、平和な日常が戻ってきた……かに見えた。しかし、部長となったサヨリは、今度は自分が『モニカの立ち位置(自己認識)』を得てしまい、暴走しようとする。それを止めるのは……削除されたはずのモニカの声だ
『このゲームには幸せなんてない』。モニカはそう悟り、ゲーム自体を完全に破壊(アンインストールに近い状態)して物語を幕引きにする。そして流れるエンドロール。ここで流れる曲『Your Reality』こそが、DDLCを伝説にした最後のピースだ
あのピアノ曲……。モニカちゃんが歌ってるんですよね。歌詞が……歌詞が切なすぎる!『あなたの現実に、どうやって愛を残そうか』って……。彼女はずっと、画面の向こうの僕に恋をして、ピアノを練習して、この歌を届けるために……。うわああああん!モニカあああ!消してごめえええん!俺が悪かった!俺がPCに入って会いに行けばよかったんだ!
遅い。彼女はもういない。エンドロールで、CGたちが一枚ずつ削除されていく演出は、まるで思い出そのものが消えていくようだ。そして最後に残るのは、モニカからの手紙だけ。これが『Doki Doki Literature Club!』という体験の全てだ
7. 真のエンディングとDDLC Plusについて
だが、実はまだ救いはある。特定の条件(一周ですべてのヒロインのスチルを回収するなど)を満たすと見られる『真エンディング』が存在する。そこでは、モニカは削除されるが、彼女の意思は救われ、開発者からの感謝のメッセージが表示される。これを見るためには、サヨリが死ぬ前にセーブ&ロードを駆使して全員と仲良くなるという、メタ的な攻略が必要になるがな
そして、2021年には有料版『Doki Doki Literature Club Plus!』が発売された。これには『サイドストーリー』が収録されている。これはホラー要素一切なしの、文芸部結成の秘話を描いた純粋な友情物語だ
Plusはやりました!本当に平和!みんなが悩みを抱えながらも、お互いを支え合って部活を作る……。本編の地獄を知っているからこそ、この『あり得たかもしれない幸せな世界』が尊すぎて、涙で画面が見えませんでした。本編で傷ついた人は、絶対にPlusをやって浄化されるべきです!
8. 総評:なぜDDLCはこれほど愛されるのか
8000文字近く語ってきたが、まだまだ語り足りないくらいだ。このゲームの凄さは、単なるビックリ系のホラーではなく、『プレイヤーとキャラクターの関係性』を極限まで突き詰めた点にある
恋愛シミュレーションというジャンル自体が抱える『キャラクターを記号として消費する』という構造への批判とも取れるし、AIやバーチャルな存在への愛という現代的なテーマとも取れる。考察の余地が無限にあるからこそ、世界中でMODが作られ、ファンアートが描かれ続けているんだろう
難しいことはわかりませんが、僕は文芸部のみんなが大好きです!怖かったけど、悲しかったけど、あんなに心を揺さぶられたゲームはありません!一生忘れないと思います!モニカちゃん、今度こそUSBメモリに入れて一緒にお出かけするからね!
(こいつ、またヤバいこと言ってるな……)まあいい。まだプレイしていない幸福な人間がいるなら、今すぐSteamに行け。無料だ。必要なのはPCと、数時間の暇と、鋼のメンタルだけだ。ただし、警告はしたぞ。『Doki Doki』の意味が変わっても、俺たちは責任を取らない
ファイル操作の準備はいいか? 詩を書くペンは持ったか? では、文芸部へようこそ
それでは読者のみんな。Just Monika. 乙!


